「イケメンいるかもしれないよ。おじさんだけど」

 これには、惹かれなかったといえば嘘になる。

 Aさんは自分が女としてこのまま終わっていってしまうのではないかという漠然とした不安を抱えていた。女として扱われたいという思いもあるし、胸に手を当てて考えてみれば「ときめきを感じてみたい」と思わないでもなかったのである。そこを夫は満足させてくれない。友人は既婚者だがそのパーティーで何人かの男性と出会い、遊んだ経験があるようだった。

 Aさんはパーティーへの参加を決意した。過去に2度露見した夫の不倫がなければ、自分はそのような場所には赴かなかったのだろうか。自問自答したものの後の祭りで、事が起こってしまえば全ては言い訳でしかない。

 Aさんはそこである男性と出会い、連絡先を交換した。2人が深い仲になるまでに時間はそうかからなかった。当初は互いに既婚であるという点が深みにはまらないための砦であるように思え、気楽であったが、感情が盛り上がってからは2人の心の重しとなり、また不倫をさらに燃え上がらせるためのスパイスとなった。

「子どもが親元を離れていってしまってから、自分の時間が一気に増えたように感じました。解放感は確かに感じていましたが、『今後も自分が夫の妻であり続ける』という閉塞感、そして『このまま女が終わってしまう』という焦燥感もありました。持て余し気味だった時間を利用して自分の不満をうまく解消できるのが、あの時の私にとっては“不倫”だったのだと思います。あの時はそんな自己分析をする余裕なんて到底なくて、恋に夢中でしたが」(Aさん)

 2人の関係は1年近く続いた。「お互い離婚して一緒になるか」といった話が出て、じゃあ具体的にそこに向けて動き出そうとなった時に、夢の中にあった恋はにわかに現実の生々しさを帯び始め、Aさんは相手に幻滅するようなシーンにいくつか出くわした。そのまま気持ちが冷めていったそうである。

>>(下)に続く

>>後編『不倫に走る母親たちの女心、子育てを終えた開放感が危ない(下)』を読む