バブル経済写真はイメージです

エリートでもない学生が
複数の内定を手にする「黄金の時代」

 4月といえば入社式。今年も多くの若者たちがその舞台に立った。それに先立つ就職活動。近年も売り手市場とはいわれているが、それを遥かにしのぐ時代があった。その頃企業は、地方の優秀な学生を獲得するために、入社試験で東京に出てくる際の足代や宿泊代を全額負担していた。それはいつの時代か。1986年12月から1991年2月までの経済拡大期。そう、バブルの時代である。

バブル時代の血湧き肉躍る饗宴で絶頂を味わった人々の証言『証言 バブル伝説』
別冊宝島編集部編、宝島社、237ページ、1300円(税別)

 一流企業が採用枠を大幅に増やし、エリートでもない学生が、複数の内定を簡単に手にする「黄金の時代」が数年続いた。いまなお、「バブル入社組」などと揶揄されることがある。しかし本書を読むと、バブルで最も恩恵を受けた主役は彼らではなく、その一つ上の世代だったことがわかる。そこで繰り広げられたのはどんな饗宴だったのか。本書『証言 バブル伝説』から引用する。

“「仮名や借名で株をやっていたので、現金受け渡しが多く、カネが山のように積み上がった。一度、札束の上で女とやると、お互いに燃えるかとマンションのひと部屋を万札で埋め、ベッドを作ってセックスをしたことがある。別に変わり映えはしなかったな(笑)。女にブロック(1000万円)ひとつ渡して終わりですよ」~本書より”

 これは「イトマン事件」について書かれた章からの引用だ。変わり映えなど、するはずがないではないか。でも、なんともバブルらしい発想だ。本書は「イトマン事件」のような事件・事象・エピソードを、本人をはじめとした渦中の人物から聞き取った証言集だ。生々しくてドラマチック。血湧き肉躍る。当時を知る人も知らない人も、スリリングに読める本だ。