吉村博光
昨年、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞を受賞した、毎日新聞の好評連載「公文書クライシス」。本書はその取材班が、取材の手の内を明かしながら、ふたたび公文書の闇を照らし出したレポートである。記者たちは今なお取材を続けており、その追及は凄みを増している。記事を読んだ方にも、間違いなく一読の価値がある本といえる。

子供から「赤ちゃんはどこから産まれるの?」と訊かれたら、どう答えるだろうか。一般的には「コウノトリが運んでくるんだよ」と答えることになっている。本書『芸術的創造は脳のどこから産まれるか?』のテーマである芸術的創造も神聖化されることが多い。しかし本書は、黙ってお母さんのお腹を指さすアプローチだ。「芸術的創造がどこから産まれるのか」について、最新研究に基づき核心に迫っているのである。

「みんなバカだなぁ」と笑うのが落語なのに、「なぜか」賢いはずのビジネスエリートにとって必要な教養となっているというのです。オチがついているような気がしませんか。

本書は、本国ノルウェーで「彼女こそが脳の脳だ」と評されている、著名な神経科学者が書いた世界的ベストセラー“脳科学本”である。世界21カ国で翻訳出版されている。本書がこれほど多くの読者を獲得できたのは、日々の出来事を使って科学を説明しているからだろう。読み手は、そこから具体的な思考を巡らすことができるのだ。

近年、ノンフィクションを世に出す新たな装置も生まれている。noteなどのweb上の有料閲覧システムだ。そこで生まれた本で、今年私が最も注目した本がこの『つけびの村』だ。発生当時「平成の八つ墓村」として話題になった、2013年に起きた連続放火殺人事件を追ったルポである。出版社に持ち込んだがボツになった原稿をnoteにあげたところ人気になり、単行本化されたものである。 noteがなければ、本になっていなかっただろう。

ほとんどの教科書は捨ててしまったが、歴史の資料集や星座の早見盤などと一緒に「地図帳」は手元に残しておいた、という方も多いのではないだろうか。本書『地図帳の深読み』は、そんな方にピッタリの本である。

売上を増やすためにブラック化している飲食業界にあって、究極のホワイト経営を続けているのだ。常識にとらわれない精神が生んだ経営は、どんな形なのだろうか。

本を開いたとき、「ウザすぎる!残業武勇伝」という見出しが目に入った。残業武勇伝とは、「終電まで残業した」「連続で何日も出勤した」などと自慢するアレである。残業に達成感と報酬と成長がついてまわっていた時代の、昔語りである。本書では、冒頭のコラムで当時(昭和)の残業と平成の残業の違いを考察していて、いきなり面白い。

第102回
「世の中には500万円で買える会社がこんなにあった!」と題する「現代ビジネス」の記事が莫大な閲覧数を集めた。その記事の書籍化である。中小企業100万社が廃業する時代と言われる中で、大手企業でマネジメント経験があれば、会社を買って社長になったほうがいいと説くのが本書である。

第98回
今年も多くの若者たちが入社式の舞台に立った。近年も売り手市場といわれているが、それを遥かにしのぐ時代があった。その頃企業は、地方の優秀な学生を獲得するために、入社試験で東京に出てくる際の足代や宿泊代を全額負担していた。それはいつの時代か。

第94回
今回取り上げる本は、木の屋石巻水産の缶詰工場再建の話である。東日本大震災による大津波で壊滅した同工場。工場跡地に埋まっていた缶詰は、震災前から縁があった東京の経堂に送られた。そして地元の人たちやボランティア等の協力で、きれいに洗って販売され、工場再建のきっかけとなったようだ。

第87回
夫に先立たれた妻は長生きするが、妻に先立たれた夫は後を追うといわれる。男の一人暮らしは、栄養面や衛生面など生活の質が落ち、酒に溺れるケースもある。一人暮らしのアルコール依存症の男性は、孤独死に至りやすい典型なのだそうだ。では孤独死を避けるにはどうすればいいのか。

第74回
子どもの脳はどのように成長していくのだろうか。愛娘が4歳になるまでの成長について、脳研究者が脳科学の面から分析し、子育てのコツを紹介する。

第69回
今回は、過労からうつ病になり、復職後に両親の介護をかかえ、パーキンソン病と闘いながら勤務を続ける「わけあり記者」の話だ。「ここまで書いてしまって良いのか」と思うほど克明に、事の次第を綴っている。本書を読めば心を動かされない人は、まずいないだろう。

第28回
「自分の家で食べるお雑煮がフツーだ」と思っていたのに、人と話してみたら「えっ!ウチと違うよ」と驚いたことはないだろうか。そんな経験があれば本書で全国の雑煮をチェックしてみよう。雑煮に対する興趣が尽きなくなるかも!?

第15回
日本で暮らす外国人の数は、昨年1年間で約11万人増え、過去最高の約223万人に達した。こうして増加した外国人の半分以上は日本で過酷な労働を強いられている「実習生」と「留学生」としてやってきているそうだ。
