日銀「展望レポート」2020年度のインフレ率予想が登場
4月末、日本銀行が出す通称「展望レポート」の中で初めて日銀政策委員会の2020年度のインフレ率予想が登場した Photo by Takahisa Suzuki
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 3月の実質賃金(名目賃金から物価上昇率を差し引いたもの)の前年比が、4カ月ぶりにプラスになった。といってもプラス幅はわずか0.8%だ。「決まって支給する給与」の実質額は0%と横ばいである。大半の家庭にとっては、生鮮食品の価格高騰が年初よりも落ち着いてきたのに伴って、給与の目減り感が一時より和らいだかな、といった程度の感覚と思われる。

 最近の消費はあまり強くない。家計調査の3月の実質消費支出額は2カ月連続で前年比マイナスとなった。同調査はやや弱めに出やすい面があるのだが、その傾向を修正した日本銀行の消費活動指数も昨年12月をピークに低下してきた。旅行収支の影響を除いた実質消費活動指数は、3月には前年比で若干のマイナスに転じている。

 政府と日銀が2%のインフレ目標を掲げて5年が経過した。しかし、物価上昇→消費拡大→所得増大→物価上昇というスパイラルはなかなか弾みがつかない。むしろ実際は、インフレ率が上昇すると消費は慎重化してしまい、インフレ率が低下すると(やや時間のラグをおいて)消費が少し上向く傾向が見られる。賃金の上昇ペースがまだ緩やかなのと、高齢化によって年金生活の家庭の比率が増えていることが背景にあるだろう。

 ゴールデンウイーク中に都内のカフェで仕事をしていたら、隣のテーブルにいた30代ぐらいの女性2人がインフレの話をしていた。物価が上がるようになったので、専業主婦になって夫の給料だけで生活していくのはますますあり得ない厳しい時代になった、という話で盛り上がっていた。

 その会話には、明らかに、自分たちの実質賃金は長期的に目減りしていくという暗黙の前提が織り込まれていた。楽観的な空気はそこに流れていなかった。勢いがいいIT企業にでも勤めている人を除けば、そういった感覚は極めて一般的と思われる。