「インフレ(物価上昇)は陽気な妖怪だが、デフレ(物価下落)は陰気な妖怪」という言葉がある。どちらも度を過ぎればよくないのは同じだが、成長率や賃金がかさ上げされ、債務負担も軽く感じるインフレより、その逆のデフレはいかにも社会の空気が重い。物価を上げようと、あの手この手で金融緩和を続けてきた日本銀行だが、4月27日の金融政策決定会合で、物価見通しをまた下方修正した。金融政策頼みの「デフレ脱却」が、ないものねだりだとはっきりしてきた中で、日銀に誰かが”タオル”を投げ入れる時なのではないだろうか。
下方修正続く物価見通し
総裁任期内には達成困難
4月27日、日銀は「展望レポート」(経済・物価情勢の展望)を発表し、2017年度の物価上昇率見通しを前回(今年1月)の1.5%から1.4%に引き下げた。18年度の見通しは前回と同じく1.7%、今回初めて発表した19年度の見通しも、消費増税の影響を除くと1.9%(影響を含めると2.4%)となっており、日銀の黒田東彦総裁が掲げる「物価上昇率2%」の目標達成は、自身の任期が終わる来年4月までにはいかにも厳しい情勢だ。
日銀が、銀行から国債を買い取るなどで市中に出回るお金の「量」を増やすとともに、物価目標達成までは金融緩和を続けるとコミットメント(約束)すれば、物価が上がるという「期待」が醸成されるという理屈で導入されたのが、2%という「インフレ目標政策」だった。
当初は、物価が安定したと考えられる「理解」程度の扱いだった。それが、「効果が出ないのはコミットメントが弱いからだ」との声に押されるがまま、いつしか物価安定実現の「目途」となり、さらに「目標」へと”格上げ”されていった。達成時期も13年4月に黒田総裁が就任するや「2年程度」とされ、経済の実体とは関係なく期限が区切られた。
だが、もともと「2%」という数字に確たる根拠があったわけではない。他の主要先進国が2%をインフレ目標にしている中で、日本だけがゼロインフレを目指す行動をとれば、円高基調を払拭できない。また、消費者物価指数は実態よりインフレ率が高めに出る傾向があるから、1%を目標にすれば実際はゼロ%となり、デフレから抜け出せていない可能性がある──。そんな程度の理由だった。