以前にもこのコラムで書いたが、「完全な非核化のための検証」は、具体的、現実的に考えれば実現は困難だ。

 IAEA(国際原子力機関)による査察が想定され、日本政府はその初期経費3億5000万円を日本が拠出している「核不拡散基金」から充てることを提案している。

 IAEAの査察は相手国が申告した核施設を検査するのが一般的だ。

 だが、北朝鮮が保有する核弾頭数の推定は「約12発」から「60発以上」と大きな幅があり、仮に北朝鮮が12発を提出、解体しても「もっと多くを造れたはず。隠しているのでは」との疑義が出るのは必至だ。

 IAEAが未申告の核施設とおぼしき箇所を査察させるよう、相手国に要求することも可能だが、相手が査察を容認する前に機材を移動させる可能性も考えられる。

 「完全な非核化」の検証をするためには北朝鮮軍の全ての弾薬庫や地下のミサイル陣地、核関連の工場、研究所などを抜き打ちで徹底的に査察する必要がある。

 イラクは1991年の湾岸戦争に敗れたから、国連の調査団による徹底的査察を受け入れざるを得なかった。91年6月から98年12月まで査察が行われ、さらに2002年11月から03年3月までの再査察で、もはや大量破壊兵器がないことが判明していた。

 だが、米、英は国連安保理の反対を無視してイラク攻撃を行った。

 北朝鮮はイラクと違い、戦争に敗れたわけではないから、全ての軍の施設などに対する抜き打ち査察を容認するとは考えられない。

 さらに「不可逆的な非核化」の実現となると、一層困難だ。

 水爆まで造った原子物理学者や核技術者が北朝鮮に残っていれば、情勢が変わった際、施設を再建して核兵器製造を再開することは容易だからだ。

 約2000人とも1万5000人ともいわれる核関係者を国外追放させても、技術者たちをを雇う国も出て核技術の拡散を招く。結局、米国に連行して収容所に閉じ込めるしかない。しかしそんな奴隷制度のようなことができるはずがない。

 「CVID」は軍事問題を現実的、具体的に考えない外交官と政治家の“言葉遊び”の感がある。

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米国は非核化で“決裂”は回避

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