トランプ大統領は
“実績”示す成果を得た

 北朝鮮の金正恩国務委員長は昨年11月29日、ICBM「火星15」の発射実験後、「核武力完成の歴史的大業を完成した」との声明を出し、核実験と弾道ミサイル実験をこれ以上する必要はなく、米国本土に届くICBMの開発を続けない姿勢を示した。

 米国自身の安全保障にとっては、これだけでも一応十分な成果だ。

 トランプ大統領は 先制攻撃も辞さない強硬姿勢で金正恩委員長 を怯えさせ「米国に対する北朝鮮の核の脅威を除去した」との実績を自国民に示せる。

 だが、それだけでは既存の中距離核ミサイルの射程内にある日本が反発し、NPT(核不拡散条約)から脱退し、自前の核抑止力保持に向かう危険も米国で語られている。

 「CVID」のスローガンは国連の北朝鮮制裁決議の中にも書き込んでしまったから全く反故にもしにくい。

 ポンぺオ長官は河野外相との会談でもCVIDを語り「完全な非核化実現まで経済制裁を続ける」と述べた。

 とはいえ、トランプ大統領にとっては史上初の米朝首脳会談を実現し、「総論」としては北朝鮮の非核化の合意を得た成果は政治的に重要だ。

 もし検証の方法などの「各論」で北朝鮮との協議が決裂し、再び厳しい対立になれば、彼は大統領に就任後唯一の功績を失うことになる。

 トランプ大統領は、地球温暖化防止のためのパリ協定から離脱、TPPからも離脱、イランの核開発を制約するためのイラン核合意からも離脱、エルサレムへの米大使館移設でも国際社会から孤立した。

 その上、関税の大幅引き上げで、EU、中国、カナダ、メキシコなどと貿易戦争を始め、国内の企業、農民からも非難を浴びている。八方ふさがりの苦境のなか、北朝鮮と一応和解し非核化の合意に至ったのは暗夜の一燈だ。

 ポンペオ長官は「北朝鮮の非核化を2年半以内に実現したい」と述べたこともあるが、これはもちろん2020年の大統領選挙でトランプ氏がそれを実績にしたいためだ。

 だが実際にはそのような短期間で「完全な非核化」が達成できる公算は低い。

 国内のトランプ支持層に向けて「非核化に成功した」と宣伝できるよう、北朝鮮が受け入れる程度のおざなりの査察、検証を行い非核化の格好をつけることになるのではないか。

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現実とずれた日本の受け止め

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