プーチン大統領対独戦勝記念日に臨むロシアのプーチン大統領。「勝利宣言」はできす弱体化が進む可能性も Photo:Anadolu Agency /gettyimages

ウクライナ戦争は長期化の様相
ロシア軍、弱体化を露呈

 5月9日、モスクワの赤の広場で行われた第77回の対独戦勝記念日のパレードは、予想に比べ低調だった。

 事前には、プーチン大統領はウクライナ南東部の港町マリウポリを制圧した「戦果」を誇るとか、「戦争宣言」を行うとかなどと言われ、空軍はリハーサルで核戦争の際、ロシアの首脳部が搭乗して指揮を執るイリューション80を飛ばしていたから「プーチン氏は演説で核使用をちらつかす」とも考えられていた。

 だがこの日のプーチン氏の演説は控えめで、ウクライナに対する「特別軍事作戦」をやむなく行うに至った経緯を語り、国民に理解と協力を求める弁解のような言辞が多かった。

 ウクライナへの出兵を「ナチズムとの戦い」と説いたが、ウクライナのゼレンスキー大統領がユダヤ人であることは、ロシア国民の多くも知っているはずだ。「ナチスと戦っている」という名分が国民を鼓舞しているようには思えない。

 欧米などが「近代的兵器を供与し、軍事顧問を送り込んでいる」ことを非難したのは、ロシアの戦況の不利、孤立を示しているが、将兵に「諸君は祖国の未来のために戦っている。ロシア軍に栄光あれ」と締めくくった演説からは停戦、撤退の気配は感じられなかった。