「民主主義への挑戦」なのか
銃撃事件が浮き彫りにしたもの
安倍晋三元首相銃撃事件が発生した直後、与野党の政治家や報道機関は、「政治的テロ」かのように捉えての言動や報道が相次いだ。
「言論を銃撃、暴力で封殺する行いは断じて許すことはできない」などと犯人を激しく非難し、「民主主義が決してテロに屈してはならない」と訴えた。
だが山上徹也容疑者(41)を奈良県警が取り調べたところ、独善的な政治理念といった“高尚”な動機ではなく、個人的な不遇の鬱憤を晴らす行動だったことが分かってきた。
これに似た事件が起きたのが、2008年6月、東京・秋葉原で起きた25歳の青年による殺傷事件だ。買い物客で雑踏する歩行者天国にトラックで突入、大型ナイフで人々を刺してまわり、7人が死亡、10人を負傷させた。
青年は、青森県の進学高校を卒業したが大学に入らず、職場を転々、自殺をほのめかしていたという。メディアは青年が派遣社員として働いていたことから不遇で「社会に不満を抱いた派遣社員の犯罪」と伝えた。
その後の裁判では教育に熱心だった母親への鬱積した感情が主な動機だったことが明らかになる。