「グローバル債務残高」が膨張を見せている。これは先進国と新興国の政府部門、企業部門、家計部門の借金を国際決済銀行(BIS)が集計したものだ。世界金融危機前の2007年末は110兆ドルだったが、17年末はそこから58%も増えて174兆ドルに達した。
先進国の失業率は、10年前となる世界金融危機以前の好況期の水準に戻っている。しかし、多くの国で賃金や物価の上昇率は10年前に戻れずにいる。
米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)は、金融緩和の出口政策に着手しているが、インフレが過熱する恐れは低いとみて、慎重なペースでそれを進めている。一方、日本銀行は出口政策の“入り口”に立つことすらできていない。
主要中銀がこうした状態だと、その周辺の先進国の中銀もおのずと金融政策の正常化に対して慎重になる。先進国全体の中銀の実質政策金利(政策金利からインフレ率を差し引いたもの)は、07年夏には3%台に乗っていたが、今年4月はまだマイナス1.1%だ(BIS調べ)。そうした緩和環境が新興国も巻き込んで多くの経済主体に借金を促し、グローバル債務残高を膨張させてきたのだ。
その結果、世界中のさまざまな市場で資産価格が高騰。例えば、ニュージーランドやスウェーデン、カナダ、オーストラリアの住宅価格は、この6年間に日本のバブル期に匹敵する約5~7割もの上昇を示している。競売における絵画落札額の過去最高記録は、同期間に4.6倍にも上昇した。
また、高級ワイン価格指数であるLIV-ex1000は、15年初から現在にかけて4割の上昇を見せている。金融緩和下でバブル気味に高騰してきた米欧日の株価指数すらアウトパフォームしている。