しかし、現在の我が国の確定拠出年金には、いくつかの解決すべき問題がある。以下、特に重要な3つの問題を取り上げる(手数料が高い、手続きが不便で遅い、制度が複雑だなどの問題は今回不問とする)。

その1 拠出可能な年齢は65歳未満ではなく70歳未満が適当

 10月29日の『読売新聞』(朝刊)に、政府が確定拠出年金の掛け金を拠出可能な年齢の上限を、現在の60歳未満から65歳未満まで引き上げることを検討しているというニュースが載った。来年の社会保障審議会で検討して、2020年の通常国会に法案を提出するのだという。

 この「方向性」は悪くない。国民が自らの長寿化に対して経済的な備えを持つための制度を整備しようとすることは適切だ。しかし、スピードが圧倒的に遅い。

 近年、日本経済全体の人手不足と人口の高齢化・長寿化を背景に、政府は企業に対して、社員が65歳になるまで雇用の継続を要請している。今や、サラリーマンの標準的な退職年齢は65歳だ。となると政府は、今後、70歳程度までの雇用継続を奨励する可能性がある。

 また、長寿国日本にあって、公的年金を制度としても、財政的にも、より望ましいものにするには、標準的な支給開始年齢を速やかに70歳まで引き上げることが妥当だ。

 リタイア後の寿命は着々と延びているし、多くの高齢者が元気であることと、個人にとっての長寿化の経済的な現実を考えると、60歳を過ぎてから10年程度は老後に備えた自助努力を後押しするべきだ。

 現在の確定拠出年金の「60歳未満」は、もはや「制度的不備」といえるレベルで現実に合っていない。結論は決まっているのだから、社会保障審議会で議論するまでもなく、政治的な判断で掛け金拠出の上限年齢を引き上げるべきだ。個々人の働き方が多様であることを考えると、一気に「70歳未満」まで引き上げることが適当だろう。

 年金制度が目下「60歳」までしか対応せず、やっと「65歳」を検討する一方で、労働行政にあってはリタイアする標準年齢を「65歳」から「70歳」に延長しようとしているというのでは、全くちぐはぐだ。年金を所管する旧厚生省と、労働行政を所管する旧労働省が一緒になって「厚生労働省」にまとまっていることの意味がないではないか。