中国はガソリン燃料のタクシーやトラック数百万台を新しい電気自動車(EV)に置き換える国家プロジェクトを進めている。その狙いは、世界的な交通機関のEV化で主導権を握ることだ。その兆しは、中国メーカー製の電動バスや電動バンの形で米国の道路にも既に現れている。EV市場でも商用となると「競争に参加しているのは中国だけだ」。こう語るのは、ドイツ国際協力公社(GIZ)の北京拠点で持続可能なモビリティ部門を率いるサンドラ・レッツァー氏。同公社は中国政府と協力し、環境に優しい交通機関を開発している。「ドイツの複数の都市が電動バスの入札をしている。ドイツ勢の応札はない」という。中国政府が掲げる産業戦略「中国製造2025」は、自国メーカーが重要な先端分野で国内市場を支配し、海外市場でも成功することを目指しており、EVはその中心にある。一部の中国自動車メーカーは商用EVの開発に軸足を置いてきた。この分野で早い時期にリードを奪えば、いずれ規模の大きい乗用EV市場での成功に結び付くとの期待からだ。中国の商用EV市場は外国勢との競争がほぼ無縁なこともあって勢いづいている。