―日本の産業界全体がグローバル化を遂げる中で、メディアは最後に残されたドメスティック産業という見方もあります。

 農業ですらWTO加入により構造転換を迫られ、国際化への改革の途上にある。一方で、メディア業界は日本語という障壁に守られているため、それが外へ出て行く障害になってしまっています。人口が減少し、無読者層も増えていく中で、国内のパイがどんどん縮小している。マーケット的に考えるならば、中国の13億人に向けて、記事を中国語で発信していくことも必要なのかもしれません。あれだけ反日精神を持っているということは、逆に日本に興味を抱いているという裏返しですから。

 アメリカ国内はすでに日本に対する関心が失われているので、英語で発信してもほとんど読まれないと思います。私がNYTに入った99年、東京には特派員が3人いましたが、それがついに1.5人になりました。東京発で採用される記事が激減し、中国発の記事が増えていったためです。ジャパン・バッシングが、パッシング、ナッシングへと変化していくさまを、当時目の当たりにしました。

―上杉さん自身もブログで発信していますが、ネットでは誰もが発言者になれます。プロのジャーナリストも一ブロガーと同じ土俵に立たされることにもなります。

 じつは私自身は余裕を感じているんです。私は東京にいて取材をしているという強みがありますが、地方のブロガーは首都の取材はできないので、いくら素晴らしい意見は発表しても、それ以上は無理でしょう。むしろ辛いのは、取材をしない評論家・コメンテーターという立場の人たちではないでしょうか。テレビでの特異な見解や陳腐な意見などは、後にネット上で攻撃され、信頼を失なう。間違ったコメントを本人があとで軌道修正しようとしても、ユーチューブなどで過去の発言を流され、誤魔化しを指摘されてしまう。すると、活字媒体もその評論家を使いにくくなります。

―上杉さんはジャーナリストとして、ブログを非常にうまく活用していますね。

ジャーナリズム崩壊
上杉隆 著 幻冬舎新書 740円(税別)

 いざとなったら執筆した雑誌の記事の情報を、ブログでアップデートすることもできます。多くの編集部は「お詫びと訂正」を載せることを極端に嫌がりますが、自分のブログで謝って訂正することができる。それと私の場合はメールアドレスを直接公開しているので、情報提供が編集部経由でなく直接入ってくるようになったところも利点です。

 そうはいっても取材費は編集部から頂いているので、媒体で発表された後にしかブログで公開しないという絶対のルールを作っています。ただ、多忙な中で毎日エントリーするのは正直辛い。たまに2、3日更新を休むと、「死んでるのか」とかメールがたくさん来て結構大変なんです(笑)。

(撮影/熊谷章)