大室 ただ、会社からすると、そういう人も必要なんですよ。「社長賞を取れる」ということは、つまり決められたルールの中で猪突猛進に走ってくれる社員だから。これだけ多様化が進んだ時代だけど、少なくとも会社である以上、もうけを出さなければならないのは必然的にある。おおっぴらに「数字は人格」を前面にする会社は多くなくても、それを完全にスルーすることはできないわけです。

 だから、どの戦略を取るかという問題で、「数字が10割、以上」みたいな会社もあれば、「数字は8、それ以外の定性評価2」や「一切定量評価はしない」という会社もある。どのバランスでチューニングしていくのかは会社の戦略次第で、社員側も入社するときにその期待値をすり合わせる必要はあると思います。

 結局、猪突猛進型は「数字は人格」みたいな会社に、「数字を問われるとへこむ」というようなちょっと傷つきやすい人は、一切定量評価をしない会社に入れば、ミスマッチは起こらないはずだから。ただ、若手で猪突猛進型の人はどうしても少なくなってきていますよね。

若手社員と中間管理職を
分断する言葉遣いの相違

大室 一方で、世代や職場によって文化も違えば、言葉遣いも違う。「フラットな組織」ってよく聞くけど、これは上の世代にとっては「(前よりも)フラットな組織」ということ。これって、元はLCCだったのが、多少リクライニングできるようになったという意味だからね、大抵の場合。しかしその文脈を共有しない若者は、JALとかのビジネスクラスのフルフラットシートを思い浮かべるかもしれない。これは無理もないんだけど、入社してみたら「全然フラットじゃないじゃん」みたいなミスマッチが起きてしまう。

正能 確かにそうかもしれない。その例え、分かりやすいです(笑)。

大室 同じ言葉でも大きな溝があるんですよ。僕が以前勤めていたジョンソン・エンド・ジョンソンには「我が信条(Our Credo)」という指針があって、「第1に顧客、第2に社員、第3に社会、第4に株主に対して責任を負う」と。でも、時価総額三十数兆円の会社が数字を求めないはずはない。数字に厳しく、達成欲の強い人たちをいさめる倫理観として、「我が信条」を掲げている。

 若者には、会社の掲げるビジョン・ミッションの素晴らしいところばかりが目に映っているかもしれないけど、往々にしてそれは「数字を前提として」という意味ですからね。人間は“当たり前”のことを言語化しないから見逃されがちなんです。