しかし、一番、重要なことは、日本企業が価格引き上げに慎重であり、価格引き下げを販売促進のツールとしていることだ。

 需要や所得が伸び悩んでいるのに価格を引き上げれば、販売が減少することは目に見えている。日本企業は、売り上げシェアへのこだわりが強い。

 シェア低下を恐れて低価格を維持する低価格戦略がデフレをもたらした大きな要因と言えよう。

消費者の「体感温度」は
プラス5%の「インフレ」

 だが、消費者が感じているインフレ率はもっと高い。

 日本銀行が3ヵ月ごとに行っている「生活意識に関するアンケート調査」では、「1年前に比べ現在の物価は何%程度変わったか」という実感を尋ねている。

 最新の12月調査では平均5.0%物価が上がっているという結果になっている。もし、この「体感物価」が正しいなら、2%の物価目標をすでに達成しているだけではなく、高インフレの心配をしないといけない。

 なぜ、物価統計の数字と体感物価はこんなに差があるのか。

 まず、日銀のアンケート調査に回答する人が、調査時点の物価動向をピンポイントで体感しているとは考えにくい。おそらく、過去1年ぐらいの物価の動向を無意識のうちに合成しているのではないか。

 また、たまにしか購入しない品目よりも、頻繁に購入する品目の価格動向の方が体感物価に大きく影響するだろう。

 そこで、「生鮮食品を除く総合」と「頻繁に(1ヵ月に1回程度以上)購入する」という二つの系列の四半期データを後ろに4四半期ずつずらしながら平均を計算して(4四半期後方移動平均)、日銀のアンケート調査で示された体感物価の平均と比べてみた(図表1)。

 これを見ると、同じように変動していることが分かる。特に、「頻繁に購入する」の系列は体感物価との連動が強そうだ。

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「隠れた物価上昇」の2つの要素

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