泉房穂前市長の暴言・パワハラ問題で揺れる明石市泉房穂前市長の暴言・パワハラ問題で揺れる明石市 Photo:PIXTA

兵庫県明石市の泉房穂前市長(55)が2017年6月、道路の拡幅工事を巡り地権者との立ち退き交渉をしていた市職員に「(ビルを)燃やしてしまえ。火を付けて捕まってこい」などと暴言を吐いていたことが明らかになり、2月2日に辞職した問題。報道で発覚した直後は明石市役所に批判の声が相次いだが、地元紙の神戸新聞が交通事故防止を力説する部分を含む職員とのやりとりの全文を詳報すると、泉前市長を擁護する声が上回った。この問題を巡っては単純なパワハラ問題ではなく、不可解な経緯もあり、関係者が疑心暗鬼になっている。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

報道各社は音源を事前に入手

 この問題が明らかになったのは1月29日。神戸新聞と朝日、毎日、読売新聞がそれぞれ朝刊で報じた。いずれも発表ではなく独自取材で、前日に泉前市長のコメントを取って掲載していた。

 泉前市長は明石市出身で東大卒。NHKディレクター、弁護士、旧民主党の衆院議員を経て11年の市長選に初当選し、現在2期目だった。昨年12月には3選を目指し、立候補を表明していた。

 行政手腕は評価が高い。第2子以降の保育料無料や中学生以下の医療費無料など手厚い子育て支援策を打ち出し、6年連続で人口増を実現。14年には犯罪被害者らに損害賠償金を立て替え払いできるよう条例を改正した。

 昨年11月にはひとり親世帯の養育費受け取りを市が保証するモデル事業を開始、同12月には元受刑者の社会復帰を支援する条例を成立させ「人権派」として注目された。

 問題の発端は9年前にさかのぼる。明石市は国から委託を受け、10年度からJR山陽線明石駅前の国道2号交差点付近で事故対策の拡幅事業に着手。12年度から用地買収を進め、16年12月に完成予定だった。