A不動産の社長は、F支店で支店長が短期間に3人も退職していることに加え、業績が思わしくない事態に頭を悩ませていた。半年ほど前、E支店で実績を上げていた支店長(甥)をF支店に異動させて業績回復を試みる。ところが、甥よりも年上部下の課長のパワハラ行為で、甥は体調を崩してしまう。社長は逆パワハラ部下にどう対峙するか?(特定社会保険労務士 石川弘子)
創立30年の不動産会社。主に賃貸物件を取り扱い、首都圏に支店が10店舗ある。1つの営業所には従業員が約4~5名おり、会社全体の従業員数は約60名。比較的自由度が高く、厳しいノルマはないので離職率は低い。
登場人物
三田支店長:5年前に入社した丸山社長の甥(姉の息子)であり、40代前半の男性。半年ほど前、F支店を立て直すためE支店から異動してきた。真面目で責任感が強いものの、気の弱さが玉にキズ。
四ツ谷課長:40代後半の男性営業課長。入社以来、F支店で10年以上働いている。以前は居酒屋で店長をしていた。押しが強く、威圧的なところがある。
丸山社長:A不動産の創業社長で60代男性。子どもがおらず、姉の子どもである三田支店長を後継者にしようと、5年前に入社させた。温和で優しい人柄だが、正義感が強く、理不尽なことに対しては一歩も引かないところがある。
支店長から挨拶しても
目を合わせようとしない部下
「おはようございます…」
出勤した三田支店長は、小さな声で挨拶した。部下からの返事は相変わらずなく、みんなパソコンに向かったり、帳簿を見たりして目を合わせようとしない。ため息をついて席に着くと、仕事に取りかかった。そして始業時刻から1時間ほど経った頃、四ツ谷課長が出勤してきたので、三田支店長は声をかけた。