あおり運転の末に乗用車でオートバイに追突、大学生を殺害したとして殺人罪に問われた大阪府堺市南区、中村精寛被告(40歳)の判決公判が25日午後3時から大阪地裁堺支部で開かれ、安永武央裁判長は「ぶつかれば死亡すると認識していた」として懲役16年を言い渡した。検察側は17日の求刑公判で「まれに見る殺人運転。あおり運転などが後を絶たず、社会が厳罰を求めている」として懲役18年を求刑していた。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
明確な殺意を認定
あおり運転を巡る事故が社会問題になる中、加害者が殺人罪で起訴されたのは「異例」と報道されている。一方で捜査関係者は、車を凶器にした殺人罪の適用はあるが、あおり運転の末に相手を死亡させた事故が殺人罪に問われたのは「初めてだろう」と話す。
公判の争点は、衝突すれば死亡させるかもしれないという認識があったかという、いわゆる「未必の故意」が成立するかどうかだったが、判決は「命を軽んじた危険な犯行」「虚偽を述べ、罪を償う姿勢がない」などと厳しく断罪し、未必の故意を認定した。
判決によると、中村被告は昨年7月2日午後7時半頃、堺市南区竹城台1丁の府道で、大学4年、高田拓海さん(当時22)のバイクに追い抜かれて立腹。直後に急発進して約1分間、クラクションを鳴らしたりパッシングを繰り返したり、時速100キロ近いスピードで追突。高田さんに脳挫傷や頭蓋骨骨折などの大けがをさせて殺害した。
判決までネットやテレビ、新聞で大きく報道されていたので、経緯をつぶさにチェックしていた読者も多いと思うが、重要な公判の間に阪神大震災24年を挟んで新聞紙面で詳細に報じられていないことや、チェック漏れがあった方のためにおさらいしておきたい。
事故の発生状況は判決の通りで、当日は大阪府警が中村被告を自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで現行犯逮捕。最初は事故とみられていた。