過去100年間に起きた最も重大な歴史的変化、つまり世界を動かす一勢力としての欧州の衰退を示す新たな証拠が先週示された。ドイツ銀行がドイツの景気後退(リセッション)を警告する中で、欧州委員会は2019年のユーロ圏の成長見通しを、もともと芳しいとは言えなかった1.9%から、1.3%へと下方修正したのである。2017年のユーロ圏の域内総生産は、2009年の水準を下回った。世界銀行によれば、同じ期間に他地域の国々の国内総生産(GDP)は、中国が139%、インドが96%、米国が34%増加した。欧州の経済が後れを取るのと同時に、欧州の政治的分断も進んだ。英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)をめぐる交渉は、英仏海峡の両岸で怒りを誘発した。ハンガリー、ポーランドなどの中欧諸国は西欧諸国から疎外されている。大半の南欧諸国は、ユーロ危機の後遺症に悩まされ続けている。そして、EU全域で、反EUの政策を掲げる政党が勢力を拡大している。シンクタンクの欧州外交評議会(ECFR)の最近の報告によれば、右派から左派まで合わせた反EUの政党は、次期欧州議会でEUの行動を阻害し、EUの力をさらに弱めるのに十分な議席を確保できる段階へと向かっている。こうした事態は、想定されていなかった。EUは欧州の衰退を食い止めるために創設されたものであり、衰退を反映するためのものではなかった。
【オピニオン】信じがたい欧州の衰退
有料会員限定
あなたにおすすめ