フィジーの海岸Photo:iStock/gettyimages

――筆者のウォルター・ラッセル・ミードは「グローバルビュー」欄担当コラムニスト

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 【ビティレブ島(フィジー)】筆者は最近フィジーを訪れ、素晴らしい南太平洋の島々が依然として世界中で最も楽園に近い姿を維持していることを確認できた。しかし、光り輝く透明な海と美しいサンゴ礁の近くで、何やら黒い影がうごめいているのも目にした。

 米国と中国の覇権争いが激化するのに伴い、オセアニア地域に散在するこの人口密度が低い島々は今後、地政学上の火種になるだろう。両国の争いはすでに、これら島しょ諸国の脆弱(ぜいじゃく)な社会に緊張をもたらしている。これらの小規模かつアクセス手段が極めて限られる島しょ諸国に対し、米中、そしてオーストラリアが政治的影響力を強めようとするなか、こうした緊張状態はさらに深刻化するだろう。

 米国が南太平洋に持つ利害関係は根深い。米捕鯨船員の保護から始まったこの海域での米海軍のプレゼンスは200年の歴史を持つ。米国の政治家はずっと以前から、自国の安全保障は太平洋地域での米国の影響力に依存すると信じてきた。ジョン・タイラー大統領(当時)は1842年、モンロー主義をハワイにまで広げた。その1世紀後には、第2次世界大戦中の激戦により、この地域の重要性が強く印象付けられた。多くの米国民が国外への積極的介入の抑制を望んでいる時代でさえ、有権者も政府当局者も引き続き、南太平洋の治安と安定の維持に関心を向けるだろう。

 長年にわたり、この地域での外交のドラマは、台湾と中国による外交的承認をめぐる争いを中心に展開されてきた。島しょ諸国は包括的援助と引き替えに、台湾と中国のどちらかを承認することに同意してきた。輸出産品を多く持たない小規模な国々にとって、外交承認は魅力的な道具となった。台湾と外交関係を維持している世界の17カ国のうち、6カ国は南太平洋か中部太平洋にある。

 一方で中国はこのところ、太平洋島しょ諸国との関係を強化しつつある。パプアニューギニア、バヌアツ、フィジーなどに対する大規模投資や援助の計画は、オーストラリアやニュージーランドに警戒感を抱かせるものとなっている。さらに中国は経済圏構想「一帯一路」への参加を望む国に大規模なインフラ支援措置を提示している。トンガの中国に対する債務残高は同国国内総生産(GDP)の約3分の1の規模に達している。