賢いマネーがあり、愚かなマネーがあり、そして有り余るマネーがある。金融バブルの警戒信号の一つに、バリュエーションを歪めるほど大きな資金力を持つ新参投資家の登場がある。住宅バブルの際には、リターンを追求する欧州の銀行や保険会社が、サブプライム住宅ローンで裏付けされた一見安全なデリバティブに資金をつぎ込んだ。その約20年前、日本のバブル最盛期には、日本の大企業が海外の名だたる不動産資産を買いあさった。現在では、サウジアラビアのハイテク投資がこれに似た役回りを演じている可能性がある。サウジは国内総生産(GDP)の半分および輸出収入の7割を原油とガスに頼っている。原油価格が急落した2014年、同国は近代化と産業多角化に迫られた。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が自ら改革を率い、サウジは2016年に国家変革計画を承認した。同計画は2020年までに非石油収入を3倍に押し上げることを目指している。サルマン皇太子は17年、サウジの未来を変える計画を発表する投資家会議「ビジョン2030」を主催し、これを「砂漠のダボス会議」と称した。