ネット上に違法にアップロードされたコンテンツをダウンロードすることは、これまでも著作権法上違法でしたが、罰則規定が存在しないため、違法ダウンロードの抑止に効果を発揮してきませんでした。

 それを補うべく、違法ダウンロードに刑事罰を導入する著作権法改正法案が6月20日に成立しました。その前日に開催された参議院での参考人質疑に私も呼ばれて意見陳述してきましたが、そこでの議論を聞いていて様々な違和感を持たざるを得ませんでした。

違法ダウンロード刑罰化は“当たり前”

 私は違法ダウンロード刑罰化に賛成ですが、その最大の理由は、価値あるコンテンツを作った人が正当に報われるようにすべきという点に尽きます。その認識に基づき、参考人質疑では3つの点を指摘しました。

 1つは、売上が減少し続けている音楽などの日本の文化を守るために必要という点です。もちろん、売上減少の原因にはコンテンツ業界の側の(制作力とビジネス展開の両面での)努力不足もあります。しかし、ネットの普及と反比例する形で1998年以降音楽の売上が継続的に減少していること、2010年時点で違法ダウンロードは正規ダウンロードの10倍もあった(レコード協会調査)などの事実を踏まえると、やはり違法ダウンロードの蔓延が大きく影響していることは明らかです。

 2つ目は、コンテンツ流通で日本のベンチャー企業が健全に成長できるようにするためにも、流通市場を公正なものにすべきという点です。今のネット上には、コンテンツは無料か非常に廉価で当たり前という考えが蔓延していますが、これは米国のネット企業が作り出した価値観に他なりません。ネット上にもっと多様な価値観やビジネスモデルが現れて然るべきですし、日本のベンチャー企業がそれを牽引すべきですが、違法ダウンロードがこれだけ多い歪んだ市場では困難と言わざるを得ません。

 そして、最後の1つは、これが個人的に一番重要と思いますが、ネット上をリアルの世界と異なる特別の空間のように扱うのは止めるべきという点です。ユーザがそのコンテンツが違法であることを認識しながら行う違法ダウンロードは、本来有償のものをタダで入手することに他ならず、リアルの世界で言えば万引きか窃盗物譲渡と同じです。リアルの世界でそれらの行為を摘発されたら刑罰を受けるのが当たり前なのに、なぜネット上ではそれが許容されるべきなのでしょうか。