文化的な統合進まないまま
「EUの一員」になった“反動”
また、ルーマニア、スロバキアなど、隣接諸国に居住するハンガリー系住民に二重国籍を認め、ハンガリー国家として保護を与えるための法律も制定している。
かつてナチス・ドイツが自民族保護を理由に(旧)チェコスロバキアに介入したことや、ハンガリー自身、第一次大戦後、国境をめぐってルーマニアと激しく争い、そこにナチスが介入してきたという歴史的経緯もあって、周辺諸国からはかなり警戒されている。
欧州議会は昨年9月、各国首脳等で構成される欧州理事会に対し、ハンガリーのこうした民族主義的な政策や、大学の自治への干渉やメディア規制の問題をあげ、ハンガリーに対する制裁手続きの審議に入るよう求める決議を採択しており、ハンガリーはこれに激しく反発している。
今回の欧州議会選挙に際しても、フィデスの党首であるオルバン首相がハンガリー出身のユダヤ系投資家で、難民支援を行っているジョージ・ソロス氏とユンケル欧州委員会委員長を並べて、陰謀論的な誹謗中傷をする「反EU」的なキャンペーンを繰り広げた。
このことがEPP内で批判され、フィデスは会派のメンバーとしての資格を停止されているが、この問題がさらにこじれれば、フィデスはEPPを離脱して、反移民・反EU統合路線を追求するフランスの国民連合やイタリアの同盟(レーガ)を中心とする、国民と自由の欧州(ENF)に合流する可能性が取り沙汰されている。
ポーランドでも、カトリックと結び付いたポーランド・ナショナリズムを掲げる政権与党「法と正義」が割り当てられた51議席の過半数を獲得している。
この党はEUそれ自体には反対しないが、伝統的な家族形態の保持、同性愛や安楽死の否定などの面でポーランドの文化にあった独自の政策を取れるよう、強い国家主権を保持すべきだという立場を取っている。
欧州議会では、英国の保守党も参加する、比較的穏健なEU懐疑系の会派である欧州保守改革(ECR)に参加。東欧諸国からの労働移民は歓迎する一方で、イスラム系難民・移民は認めないという姿勢を取っている。
ポーランドについても、司法に対する政府の監督を強化する司法改革が、EUの基本理念である「法の支配」に反するとして、欧州委員会が制裁を提案している。
ハンガリーやポーランドで見られるのは、移民への反発はあるにしても、それよりは、経済統合や競争力の向上を最優先してEU統合が進められてきたなかで、十分に文化的に統合されないまま「EUの一員」になってしまい、固有の文化や伝統をもつ「国民国家」の独自性を失うことへの抵抗感だ。



