5月下旬に行われる欧州議会選挙では、欧州連合(EU)懐疑派が3分の1に迫る議席を獲得すると予想されている。今のところ市場の注目はブレクジットに向いており、欧州議会選挙を警戒する動きは乏しい。しかし、彼らの台頭によってユーロの屋台骨が揺らぐ懸念はないのか。ここではEUの政治システムの特徴を踏まえ、選挙に向けた投資戦略を整理してみたい。
躍進する「EU懐疑派」
欧州議会選挙の勢力図は
EU加盟国では、移民排斥や国民主義を謳う極右政党が議席を増やしている。ドイツのための選択肢(独)、国民連合(仏)、同盟(伊)、国民党(デンマーク)、民主党(スウェーデン)など、その勢いは熱病のようにEU全域に広がっている。彼らは必ずしもEUからの離脱を目指しているわけではないが、EUの現行制度に対する懐疑的な勢力として、各国で政権の座を争うまでに成長している。
EU懐疑派が躍進している最大の理由は、2015年以降に急増した中東・アフリカからの難民問題だ。100万人を越える難民が欧州に押し寄せ、治安の悪化や財政負担の増大が目立ち、人々の不満が爆発した。加えて、債務危機の発生以降、EU各国で緊縮財政が続いていることも、人々の閉塞感につながっている。
そうした中、5年に一度の欧州議会選挙が5月23~26日に行われる。前回の選挙では極右・極左政党が議席を伸ばして衝撃を与えたが、今回は前回をさらに上回る得票が見込まれており、結果次第ではEUの政治システムが大きく揺さぶられる事態も想定される。
EUの立法制度は、欧州議会、EU理事会、欧州委員会の3つの機関が重要な役割を果たしている。日本に例えるならば、それぞれ衆議院、参議院、内閣といったところだろうか。
衆議院に当る欧州議会の議員は、EU圏5億人の市民から直接普通選挙によって選出される(定数751名)。議会では政治会派が結成されており、これまでは中道右派「欧州人民党(EPP)」と中道左派「社会民主進歩同盟(S&D)」の2大勢力が議席の過半数を握って、安定的に議会運営を行ってきた。