4月28日に行われるスペイン総選挙は、事実上、5月23日から実施される欧州議会選の前哨戦としての性格も持っている。極右政党VOX(ボックス)がどの程度議席数を獲得するかで、スペイン内政だけではなく欧州議会の勢力図にも変化が生じるからだ。英EU離脱ばかりがクローズアップされがちだが、EU側のイベントにも目を向けたい。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査本部研究員 土田陽介)
スペインで月末に解散総選挙
注目される極右政党の議席動向
スペインで4月28日に総選挙が行われる。下院で新年度予算が成立せず、サンチェス首相が解散に踏み切ったためだ。このスペインの総選挙は、5月23日から実施される欧州議会選の前哨戦としての性格も持っている。最大の注目点は、極右政党であるVOX(ボックス)がどれだけ議席数を獲得できるかにある。
戦後長らく、欧州諸国の国政は中道右派と中道左派の二大政党によって営まれてきた。ただ欧州債務危機後は、右派左派を問わず、反EU(欧州連合)や反移民など急進的な主張を展開する民族主義政党が人気を集めるようになった。スペインもまたその例に漏れず、そうした民族主義政党が徐々に力を付けてきた。
サンチェス首相が率いる社会労働党(PSOE)は、スペインを代表する中道左派政党だ。長年のライバルである中道右派の国民党(PP)と共に国政を担ってきたが、2008年秋に生じた世界金融危機後の欧州債務危機の過程で、PSOEよりも左派色が強い政党ポデモスが台頭したことで、二大政党制は事実上崩壊した。
また債務危機後には、カタルーニャ州を地盤とする新興右派の地域政党、市民党(シウダダノス)も勢力を強めた。以上の4党に加えて、18年末頃から急速に支持率を高めているのがVOXだ。元PPの極右勢力がスピンオフして結党されたVOXは、自らを右派かつキリスト教民主主義政党であると位置づけているが、その主張は実に過激である。