政治巧者・英国のEU離脱混迷は「不慣れな選挙」が理由だった5月24日に辞意を表明した英国のテリーザ・メイ首相 Photo:EPA=JIJI

「万策尽きた」メイ英首相は辞意を表明

 英国のテリーザ・メイ首相が辞意を表明した。保守党の党首を6月7日に辞任し、次の党首が7月中に選出されると、メイ首相は後任に首相職を譲ることになった。

 メイ首相は昨年11月に英国の離脱条件を定めた協定案を欧州連合(EU)と合意したが、英議会での合意形成に苦しみ、3回も否決されていた。当初予定された、今年3月末のEU離脱は、10月末まで延期された。首相は、労働党など野党の支持を得るために、「2回目の国民投票」を条件つきで容認する方針を示した。だが、これに強く反発した党幹部が辞任するなど保守党内に混乱が広がった。議会採決もできない状況で「万策尽きた」首相は、ついに辞職に追い込まれた。

 英国政治は、「議会制民主主義の本家本元」である。1990年代以降の日本の政治・行政改革は英国の制度を参考に進められてきた(本連載第183回・P.2)。少なくとも、2016年の国民投票でEU離脱が決まるまでは、首相の強力な指導力(第25回)、財政再建の成功(第131回)、規制のないオープンな経済の実現(第52回・P.6)と、英国は日本が参考にすべき事例であったのは間違いない。その英国が、どうして議会で何も決められないほどの混乱に陥ったのだろうか。