川崎事件で偏見に晒される「引きこもり」当事者たちの折れそうな心川崎事件や練馬事件の報道を通じて、引きこもり当事者に対する偏見や差別への動揺が広がっている(写真はイメージです) Photo:PIXTA

事件報道に胸を痛める
「8050問題」学習会の参加者たち

 川崎市で起きた児童らの殺傷や練馬区で起きた父親による長男刺殺などの一連の事件の後、報道などを通じて引きこもり当事者に対する偏見や差別への動揺が広がるなか、札幌市で6月9日、「ひきこもり8050問題と命の危機予防を考える」と題した学習会が開かれた。

 主催したのは、ひきこもり家族会である「KHJ全国ひきこもり家族会連合会北海道『はまなす』」。もともと事件の前から筆者が招かれて企画されていたイベントだった。当初の定員をはるかに超える110人以上の参加者やメディア関係者で、会場は立ち見が出る盛況ぶりとなった。

 また、イベントを企画したのは、引きこもり経験者であり、引きこもり当事者に手紙や電子メールを中心とした双方に無理のないピア・サポート活動を進めるNPO「レターポストフレンド」理事長の田中敦さんだ。

 まるで一連の悲劇と、その後の余韻に覆われる今の空気を予見していたかのような題名のセンスにも、驚かされる。

 第2部のパネルディスカッションでは、従来の「若者支援」から外れがちな40歳代以上の引きこもり当事者たちが、田中さんと共に出演。身近な地域で私たちができることは何なのかについて、当事者たちが自らの言葉で発信した。

 登壇者の1人である50歳代の当事者男性は、技術職の正社員として働いていたものの、人間関係や超過勤務などから身体を崩して退職。すぐ次の仕事に切り換えることができなかった。

 その後も、アルバイトを探して働いたものの、長続きしなかった。派遣の仕事に就いても契約が切れてしまい、「早く次の仕事を見つけなきゃ」という焦りに追われているうちに、眠れなくなった。うつの薬を処方されたものの、ズルズルと薬を飲む生活が続いてしまった。