川崎市小学生殺傷事件の「再発防止策」は存在するのか川崎市小学生殺傷事件で再発防止策が議論されているが、実際のところ、それはどこまで可能なのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

登校中の小学生らを襲った惨劇に
「傾向と対策」はあるのか

 5月28日の朝、神奈川県川崎市にあるJR登戸駅近くで、51歳の男性が、私立小学校のスクールバス乗り場にいた児童・教員・保護者らを包丁で襲撃した。児童を含む19名が殺傷され、うち女子小学生1名と保護者1名が死亡した。男性も自分の首を刺して死亡した。

 私立小学校は、当日夕刻に記者会見を開催した。朝、その現場に居合わせた教頭が状況を説明し、理事長と校長は「児童や保護者への取材を控えてほしい」と要請した。

 朝、突然の惨劇の場に居合わせた教頭は、被害を最小限に食い止めるべく容疑者に立ち向かい、児童たちの状況を確認しながら110番通報や小学校への連絡を行ったと報道されている。警察の聴取や現場検証への立ち会いなど、その日の間だけでも対応すべきことが多数あったはずだ。そして夕刻、記者会見に出席しているのである。どれほどの負荷であろうか。

 私立小学校側は、「決して起こってほしくはない万が一」としては想定していたであろう「万が一」の発生にあたり、目の前の児童を守るための最善を尽くしながら、そして保護者に対する数多くの責任を果たしながら、長い1日を乗り越え、夕刻の記者会見に臨んだことだろう。教職員たちが、この週末、せめて身体を休められることを願う。

 私はいまだ、衝撃のあまり、言うべき言葉が見当たらない。形式的な哀悼の言葉を書くことはできるけれども、「こんな事件を、どう受け止めればいいのか」というのが正直なところだ。

 ともかく、家族を理不尽にも奪われた方々、私立小学校をはじめとする関係者の方々、そして容疑者の遺族となってしまった方々に、少しでも多くの配慮が向けられることを願いたい。その方々にとって、おそらく最も切実な願いは、事件が起こらなかったことであろう。しかし、その願いは、決して叶わない。

 せめてもの、実現可能性の高そうな願いは、「こんな事件が再発しないように」「エゴ丸出しで申し訳ないが、自分の周辺にだけは起こらないように」であろう。安倍首相も、事件当日に「子供たちの安全をなんとしても守らなければ」と述べ、登下校時の安全確保対策を指示したと報道されている。

 登戸駅がある川崎市多摩区は、事件当日、保育園に散歩禁止を要請した。神奈川県内の自治体では、幼稚園・保育園・小中学校の登下校の安全確保のための取り組みが、早々と強化されている。方法は、集団登下校・見守り・パトロールなどだ。