トランプ米大統領と中国の習国家主席トランプ米大統領と中国の習国家主席(6月29日、大阪) Photo:Reuters

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

***

 米中貿易交渉で圧倒的な交渉力を握っているのは米国のはずだ。米国が中国から輸入しているものはその逆よりずっと多い。米国は数多くの重要な技術について唯一の供給国であるうえ、世界の国々からより多くの支持を受けている。

 しかし中国には非常に有利な点がひとつある。それは目的がはっきりしていることだ。同国の交渉の優先順位は、過去何十年かの間に変化してきたが、目的は常に同じだった。それは、一党支配を維持しながら発展の階段を着実に上っていくことだ。華為技術(ファーウェイ)への部品供給を禁止する米国の措置は、この発展の次の段階、つまり世界最先端の技術分野で他国と競う段階への移行を、決定的に脅かすものだった。だからこそ中国の習近平国家主席は先週末、大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせてドナルド・トランプ米大統領と会談した際、貿易交渉再開の主要な条件として同禁止措置の解除を求めたのだ。

 一方、米国の指導者たちは、中国を管理可能なパートナーとして扱うか排斥すべきライバルとして扱うかで、以前から意見が分かれている。トランプ政権内部でも割れており、ファーウェイに一時的猶予を与える大統領の決定は、これまでと同様にゲーム終盤の展開を混乱状態に陥れた。

 中国は2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟した。その狙いは非効率な国有企業に規律をもたらし、外国市場へのアクセスを確保し、輸出主導の成長を促進することだった。人民元が過小評価されていたこともあって、WTO加盟国となった中国には外国から大量の資本と技術が流れ込み、これが中国を世界の工場に発展させた。

 この結果、中国の貿易黒字は拡大し、米国との摩擦が激化した。中国政府は人民元相場の上昇を容認することで、こうした緊張を緩和した。やがて同国の優先順位は、対内投資の誘致と輸出主導の成長から、国内のチャンピオン企業の育成へと変わっていった。このため、国内総生産(GDP)に対する貿易黒字の比率は縮小し始めたものの、西側諸国の企業は中国市場へのアクセスを制限され、中国の競合企業への技術・ノウハウの移転を迫られることになった。