フランスの思想家は複雑な手法よりエレガントな理論を好む。仏メディア大手ビベンディもそのようだ。ビベンディは傘下のユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)の株式を中国のインターネットサービス大手、テンセントホールディングスへ売却する計画だが、これはビベンディのキャッシュリターンより簿価に好都合となる。ビベンディは6日、UMGの株式10%を約300億ユーロ(約3兆5800億円)でテンセントに売却する「予備交渉」に入っていると述べた。UMGはストリーミング事業がもたらした音楽業界のルネサンス(復興)で最大の受益者となっている。ビベンディ株はこの日の取引で大幅に上昇した。ビベンディは1年以上前からUMG株の売却を検討していたため、こうした交渉は驚きではない。だが株式評価額は予想範囲の上限に近かった。フランスのケーブルテレビ(CATV)大手など他にも多くの資産を持つビベンディ自体は、この日の株価上昇後でさえ、負債を含めた評価額がわずか315億ユーロにすぎない。投資家は持ち株会社であるビベンディを大きくディスカウントしている。同社を所有する富豪のボロレ一族は、時として幅広い株主利益への配慮に欠けることがある。