中国で「アベンジャーズ/エンドゲーム」がヒットするとはハリウッドの誰もが予想していた。一方、レバノンの映画「存在のない子供たち」は今年のアカデミー賞で最優秀外国語映画賞にノミネートされたが、ヒットの予感を覚えた人は誰もいなかった。だが、それまでどの国でも興行収入が200万ドル(約2億1200万円)を超えたことがなかった「存在のない子供たち」は、中国で5400万ドルを稼ぎ出した。意外なヒットの裏には、中国の電子商取引大手アリババグループの存在がある。これまでハリウッドの大作しか提供されてこなかった中国の観客に、批評家から高い評価を得た映画をアリババが宣伝し、大きな成功を収めている。中国では最近まで、ハリウッド映画の輸入と言えば「スパイダーマン」のようなコミックが原作の作品や、「ワイルド・スピード」のようなアクションものが主体だった。アリババはここ数カ月、複数のアカデミー賞受賞作や候補作の配給で成功を収めており、こうした戦略は世界2位の映画市場である中国で、嗜好(しこう)が多様化しつつあることを示している。