ノーベル賞学者とベストセラー作家。その間には、スポーツが取り持った縁があった。選手として、作家として共にラグビーに向き合った二人の対話が、ワールドカップ開幕直前に実現。日本のラグビーに、そしてあらゆる組織や人材にとって、今、真に求められるものとは? (構成:大谷道子)

撮影:岡村啓嗣

山中 池井戸さんとは、もともとゴルフで知り合ったんですよね。

池井戸 そうですね。ほぼゴルフ場でしかお会いしていなくて。

山中 池井戸さんの作品に触れたのは、テレビドラマの「半沢直樹」がきっかけです。どれも面白いですよね。僕もマラソンをやりますから、「陸王」は特に感動しました。でも、先にドラマを見てしまうと、つい「小説は……いいか」となりがちで。

池井戸 ハハハ! そんなことおっしゃらないで読んでください。

山中伸弥(やまなか・しんや)
京都大学iPS細胞研究所 所長/1962年大阪府生まれ。神戸大学医学部卒業、大阪市立大学大学院医学研究科修了。米国グラッドストーン研究所、京都大学再生医科学研究所勤務などを経て2010年より現職。12年、ノーベル生理学・医学賞を受賞。最新編書に『友情2~平尾誠二を忘れない~』がある。
撮影:岡村啓嗣

山中 すみません(笑)。でも、最新作の『ノーサイド・ゲーム』は、僕がラグビーをやっていたこともあって、初めて小説を先に読みました。ドラマのラグビーシーンは迫力ですが、小説の描写も本当にすごくて。ご自身ではラグビー経験はないんですよね?

池井戸 そうですね。テレビで試合を見るくらいで。小説には、直接的な描写はあまり書いていないんですよ。試合も、観客の目を通した場面だったりしますから。

山中 でも、まるで試合のフィールドの中にいるようで、初めて「池井戸さんってすごい人なんやな……」と思いました(笑)。僕が思うに、作品の読みどころは三つあって、一つはラグビーの場面。次に、たぶん池井戸さんが最も得意とされる会社の中での出世争いや駆け引きの場面。それからもう一つ、ラグビー協会と選手やチームとの間の葛藤が描かれているところだと。ワールドカップを控えたタイミングで、よく書かれたなぁと思いました。

池井戸 そうですか。“出禁”を覚悟で書いてよかったです(笑)。

山中 フフフ。スポーツ界は、サッカー、バスケットと次々と改革がなされていますよね。ラグビーにもやっぱり必要だと思う。前回のワールドカップで南アフリカに勝った直後のトップリーグの試合がガラガラだったのは本当にショックでした。池井戸さんは慶應のご出身ですが、僕らの学生の頃、日本選手権や大学選手権は超満員だったでしょう?

池井戸 ええ。ちょうど日本選手権でトヨタ自動車に勝って日本一になったころです。

山中 でもJリーグが満員で、ラグビーと逆になった。あの平尾誠二さんも、一時期日本サッカー協会の理事をされていましたが、ラグビーも変わらなくてはと思っておられたんじゃないでしょうか。