シェアオフィス事業を運営するウィーワークの親会社、ウィーカンパニーの新規株式公開(IPO)延期で最大の打撃を受けたのは、同社自身でも同社の取引銀行でもない。非公開市場が公開市場より優れているという神話だ。金融業界の花形はヘッジファンドやベンチャーキャピタル、未公開株投資ファンドの運用担当者――。投資家は昔からそう聞かされてきた。これら先見の明があるとされる天才たちは、公開市場を汚染する短期的な思考とは無縁と言われている。投資は長期的な視野に立って行うべきもので、そうすればリスクは低くなり、リターンは大きくなるというのが彼らの考えだ。年金基金や大学の基金など巨大投資家がそれを信じて非公開市場に投じた金額は、2008年以降でおよそ2兆ドル(約215兆円)に上る。個人投資家がロープの向こう側への立ち入りを許されることはまれだが、ウィーカンパニーの問題が示すように、それは必ずしも悪いことではない。