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「チキンラーメン」「カップヌードル」を発明した日清食品の創業者・安藤百福の次男で、日清食品の社長となった宏基氏は、次の時代を作るために「チキンラーメン」「カップヌードル」に続く新たな伝説を作った。それが今や50年も愛されている「どん兵衛」だったが、発売に至るまで知られざる葛藤があった。(イトモス研究所所長 小倉健一)
iPhoneでさえ“未完成”、誕生から完璧だった日本の発明品
究極の発明とは何か。 それは、誕生した瞬間に完成しており、その後ほとんど進化する必要がないもののことを指す。
世の中の製品の99パーセントは、未完成の状態で生まれ、時間をかけて改良され、徐々に洗練されていくものだろう。
だが、ごくまれに「最初からゴールテープを切っている」ような究極の発明品が生まれることがある。産まれたときから、足すものもなければ、引くものもない。最初の姿が、すなわち最終形であるような存在だ。
例えば、2007年にスティーブ・ジョブズが発表した初代iPhoneを思い出してほしい。 物理的なキーボードを排除し、画面に直接触れて操作する――。iPhoneは間違いなく革命だった。
世紀の発表から20年近くが経とうとしているが、イノベーションが起き続けるIT業界にあって、iPhoneはほとんど同じ型式を保ち続けている。
だが、現代の視点から振り返ると、天才・ジョブズでさえ、画面の下に「ホームボタン」という物理的なスイッチを残していた事実に気づく。
完全な全画面、つまり「ボタン1つない究極の板」に到達するまで、人類はそこからさらに10年の歳月と進化を必要とした。 つまり、iPhoneでさえ、誕生時点ではまだ「進化の途中」にあったのだ。
しかし、1958年の日本に、その常識を完全に覆したプロダクトが存在した。 それこそが、日清食品の創業者・安藤百福が発明した「チキンラーメン」である。







