ハードルが上がった利上げ再開
ドル高は抑えられるが株価上昇に弾み

 一方、利上げに関しては、市場は率直にハードルを上げたと感じただろう。物価が上昇しにくくなっているのは、近年は世界的に見られる現象だ。特に先進国では、多くの中央銀行が物価目標水準を達成できず、低金利が長期化し、様々な弊害が懸念されるなど頭を悩ませる問題となっている。

 米議会予算局(CBO)の試算によれば、足元のGDPギャップ率は0.6%程度にとどまっている。潜在成長率は2%程度としているが、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.9%とわずかながらも潜在成長率を下回っている。前述したように、製造業部門の減速傾向に歯止めがかかる兆候も見えていないなかで、FRBの利上げ要件を満たすようなインフレ環境は当面実現しない可能性が高い。このことは、市場では短期金利のみならず、長期金利の上昇も抑制する。為替市場では、ドルの上昇を抑える要因となる。

 景気回復の期待が高まれば、利上げへのハードルが高いと見なされているなかで、株価の上昇には弾みがつこう。リスク性資産の上昇傾向が顕在化すれば、円には下落圧力がかかりやすくなり、諸通貨に対してドル高への流れが生じなくても、対円でのドルは上昇含みとなろう。

米景気の回復には時間がかかる
12月FOMCでも利下げの可能性

 もっとも、このような利上げ云々で市場が動くようになるのは、景気が回復に転じる兆候が見えてからだ。それには、最低でも生産活動の先行指標である受注関連統計の回復が必要だが、もう少し時間がかかりそうだ。しばらくは、製造業部門から非製造業部門への景気減速の波及リスクが高まりつつあることが、経済統計から垣間見える可能性が高い。

 こうしたマイナスの影響に対し、これまでの金利低下による需要押上げ効果(たとえば住宅需要の回復)が影響を相殺するはずだが、FRBがしばらく“動かないでいい”と判断したことで、かえって市場がネガティブな材料に反応するリスクは高い。それが度を越せば、今年最後のFOMCが開かれる12月に、再び利下げを余儀なくされる可能性も十分にある。

(第一生命経済研究所 取締役 首席エコノミスト 嶌峰義清)