歴代FRB議長が
パウエル氏に援護射撃
FRB(米連邦準備制度理事会)に対するトランプ大統領の激しい攻撃は、収まる兆しが見られない。ごく最近でも、1%の大幅利下げ(政策金利引下げ)の実施を強く求めるなど、露骨な政治介入を繰り返している。
こうした中、FRBの歴代議長らがパウエル議長の援護に乗り出した。8月6日の米ウォールストリート・ジャーナル紙には、FRBが政治から独立していることの重要性を説く論文が掲載された。これは、歴代FRB議長、ポール・ボルカー、アラン・グリーンスパン、ベン・バーナンキ、ジャネット・イエレンの4氏の連名による寄稿だ。
そこではまず、FRBの金融政策が短期的な政治的意図の影響を受けることの弊害が指摘されている。名指しは控えたものの、FRBに政治介入を繰り返すトランプ大統領への強い批判が、この論文に込められていることは明らかだ。
短期的な政治的ニーズに応える金融政策を実施すると、長期的には高いインフレ率や低い成長率など、好ましくない経済環境を生む、との研究結果も紹介されている。また、金融政策が政治の影響を受けているとの認識が広がるだけでも、中央銀行に対する国民の信認が低下し、それが不安定な金融市場や経済の悪化を生む、とも指摘されている。
この論文は、中央銀行の政治からの独立の重要性について、教科書に書いてあるような内容をなぞったものであり、必ずしも新しい論点は見られない。しかし、そうした優れて常識的な意見をあえて述べている点に、FRBとの関係において、今までの常識を無視した行動をとるトランプ大統領に対する強い批判が込められている、とも読める。ただし、トランプ大統領が歴代FRB議長のこうした意見に耳を貸すことはないだろう。
FRBの独立性に関する
米国民の関心は薄い
ところで、トランプ大統領が過去の慣例を破って、FRBへの政治介入を繰り返すことを許しているのは、実は米国国民だとも言えるのではないか。国民がFRBの独立の重要性を十分に理解しているならば、トランプ大統領のこうした姿勢を強く批判するはずであり、そうなれば来年の大統領選挙への悪影響に配慮して、トランプ大統領はそうした行動を控えるからだ。