利下げ期待が高まる米国だが
政策金利は中立金利を下回ったまま
7月末に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では、2008年以来となる利下げが実施され、年内に2~3回の利下げが実施されるだろうとの見方が強い。これは米国に限ったことではなく、他国でも金融緩和期待が高まっている。
米国での利下げ見通しの背景には景気減速がある。米国景気は底堅いものの、主要経済指標は景気の勢いが衰えていることを示している。さらに、景気に先行する経済指標の一部(ISM製造業新規受注判断DI)は、景気減速が年内は続く可能性が高いことを示唆している。
米国以外の他国では、景気の減速感がさらに強い。製造業の景況感指数をみると、景気判断の基準となる50ポイントを下回っている国が大半だ。
物価が落ち着いていることも利下げを正当化する。多くの国でインフレ率は中央銀行が目標とするレベルを下回っている。景気が減速気味であることを勘案すれば、インフレ率がさらに鈍化するリスクはあっても、目標を上回る可能性はほとんどない。ユーロ圏や日本、オーストラリアなどでは、インフレ目標に届くことのないまま、景気が減速し始めている。
ただ、多くの国では利下げ余地が乏しい。リーマンショック時に大幅に利下げした水準から現在に至るまで、政策金利を引き上げていない国が多い。
一方、これまでに9回(計2.25%)政策金利が引き上げられた米国では、利下げ余地が大きい。それでも政策金利は中立金利(※)を下回っていると考えられている。つまり理屈から考えれば、足元でも政策金利は景気刺激効果が働いており、金利以外の要因から生じている景気減速圧力を回避することができれば、金利を引き下げる必要はないと考えることもできる。
政策金利が中立金利を上回ると景気には抑制圧力が、下回ると刺激効果が生まれると考えられている。