数多くのテレビ出演や講演、ベストセラー作家としての顔を持つ明治大学教授の齋藤孝先生と、『ぴったんこカン・カン』『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』『輝く! 日本レコード大賞』など数々の人気番組の司会者として知られるTBSアナウンサーの安住紳一郎さん。

TBS『新・情報7days ニュースキャスター』で司会者とコメンテーターとして共演しているふたりは、かつて明治大学で先生と生徒の関係だった。
中学校高校国語科の教員免許を持つ安住アナは当時、明大の教職課程で齋藤孝先生の授業を受けていたのだ。
そんな師弟関係にあり、日本屈指の話し手であるふたりが、『話すチカラ』について縦横無尽に語り尽くす。

“国語科オタク”を自認する安住アナの日本語へのディープなこだわりは必読。
齋藤孝ゼミの現役明大生を前に、安住アナが熱弁をふるった白熱教室の内容も盛り込む。

学生からビジネスパーソン、主婦まで、日ごろの雑談からスピーチ、プレゼンまで楽しくなる『話すチカラ』が身につく!

安住紳一郎TBSアナウンサーが語る<br />「話すチカラ」の養いかたPhoto: Adobe Stock

はじめに

私が明治大学で齋藤孝先生の授業を受けていたとき、先生はまだ文学部の教授でも准教授でもなく、教職課程の専任講師。正直なところ、見た目は「大学院生のアルバイト」のような感じでした。

当時の明治大学には2部(夜間部)が併設されていて、6限目以降は働きながら大学に通う2部の学生が学ぶ時間となっていました。

毎日夕刻になると、スーツを着た男性がわらわらと校舎に集まってきて、中には新宿でホステスをしながら勉強をしている女性もいました。

当時2部で開講されていた教職課程の授業を、1部の学生も受講できるという“超法規的措置”がありました。

そこで私は1部の学生でありながら、教師を目指す2部の大人たちに交じって授業を受けていました。その講師の1人が齋藤先生だったのです。

8限目の授業が終わると、夜の9時50分だったでしょうか。御茶ノ水のコンクリートの谷間で夜遅くまで授業を受けていた、あの頃の明大生たちを思い出します。

私の2歳上の姉は、地元・北海道で高校の教師をしています。

学校の先生は比較的身近な職業であり、私自身も中学・高校の国語教諭になろうと思っていました。

縁あってアナウンサーという職業に就くことになりましたが、人前で話すことへの情熱や、日本語に対する探究心は、齋藤先生の授業を受けて教職を目指していた頃から変わっていません。

今回、齋藤先生から「話すチカラ」というテーマで出版のお話をいただいたとき、先生と出会ったきっかけである明治大学は外せないと考えました。

そこで私の発案で、明治大学の教職課程の学生を前に、お話しする機会をつくっていただきました。

私が現役の明大生を相手に話をするのは、自分の心にもう一度火をつけるための作業でもありました。

話し手も聞き手も、真剣に向き合っていると、お互いに心の炎を交換することができます。

まずは自分が燃え上がり、なるべくたくさんの炎を相手に与える。そして、相手からもたくさんの炎をもらいながら話す。

これは、コミュニケーションの基本であるだけでなく、よりよく生きていくための秘訣でもあると思います。

明大生たちを前に話すことで、心の炎を交換できたことに感謝します。

この本は、齋藤孝先生との対談と、明治大学の後輩たちに語った内容を書き起こしたものです。

後輩たちを前に話しているので、先輩ヅラが鼻につくかもしれません。そのニュアンスは割り引いて読んでいただければ幸いです。

そして、私の後輩の教職課程を学ぶ明大生になって読んでください。

芸能の世界には「演者は観客が育てる」という言葉があります。とにかく人前で話す実践こそが、話すチカラを養います。

本書の内容が、読者の皆さんの心に響けば幸いです。
皆さんがいい人生を送れますように。