親書のやり取りで交流するも
ミサイル三発発射される文政権

 韓国の朝鮮日報などによると、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は5日、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と面談した際、同外相は「韓国は北朝鮮を支援する意思があり、準備ができた」と語ったと明らかにした。

 しかし、韓国政府の公式発表は、北朝鮮支援について国民の目を意識し、言質を取られないように慎重に対応している。実際、青瓦台の幹部は7日のブリーフィングで「当局が協力して準備すべき事項であるため、三・一節の時に(文大統領が)提案はしたが、具体的内容を明らかにするのは難しい」と述べた。また、統一部当局者も「現時点では、それこそ自分たちのことで精一杯なので、北朝鮮への防疫を話題にする状況ではない」と説明している。北朝鮮支援が正式に固まる前に韓国国内にその情報が漏れると、自国民からの猛烈な反発を招くということを恐れているのだろう。そんな気配りをしながら、北朝鮮支援の準備を進めていた。

 その一つが北朝鮮の金正恩国務委員長との親書やりとりだ。4日、金正恩委員長は文大統領に「必ず勝ち抜くと信じる。南側同胞の大切な健康が守られるよう祈る」「文大統領が新型肺炎を克服できるよう静かに応援するし、文大統領に対する変わらぬ友情と信頼を送った」とする親書を送った。

 これに対し文大統領は、金委員長に感謝の意を込めた親書を返したそうである。青瓦台は文大統領の親書の内容について「詳しく明らかにするのは外交上正しくない」として具体的な言及を避けている。ただ、青瓦台の尹道漢(イン・ドハン)国民疎通首席は金正恩委員長の親書に防疫の要請はなかったと伝えた。

 金正恩委員長はこれまで、韓国が米朝の仲介役を果たすことや、文大統領の南北協力の提案をことごとく拒否している。また、前日には金与正朝鮮労働党組織指導部第一副部長(金正恩氏の妹)が、「青瓦台の低能な思考方式に驚きを表す」として、韓国の北朝鮮の飛翔体発射への懸念を強く非難する声明を発したばかりである。北朝鮮がこうした説明不能な行動を示すこと自体は珍しくなく、韓国のマスコミはその背景に北朝鮮の苦境があるとの見方を示している。これまでと同じく、北朝鮮は文大統領の“微笑み”はほぼ相手にせず、支援を要請したり強硬姿勢を和らげて歩み寄ったりするような態度は微塵も見せていない。

 ちなみにロイヤルファミリーである金与正氏が、このような非難声明を出したのは初めてであり、与正氏が表に出たことは、正恩氏に何かあった証ではではないかと見る向きもある。

 北朝鮮は、公式的には新型コロナの国内感染者は「一人もいない」と主張してきた。だが韓国メディアは、実際には北朝鮮内部で新型コロナの感染が急速に拡大し、収拾が困難な段階に入ったと推測している。

 北朝鮮の新聞が3月1日、平安南北道と江原道で7000人近い住民を「医学的監視対象者」に分類し、「自宅隔離した」と報じたのは、独自の防疫に限界を感じ、「国際社会の支援を引き出そうとの意図」(韓国の国策研究所の関係者)との見方も出ている。北朝鮮メディアはその後、約半数の住民を隔離から解除したと報じたが、これは逆に韓国への支援要請をカモフラージュする動きとも考えられる。

 北朝鮮は1月22日、中国との人的往来を封じた。しかし、これも遅すぎたと推察できる。昨年末に中国に派遣していた労働者が大挙して帰国し、その労働者が北朝鮮国内で感染を広めたといわれている。

 また、中朝国境付近ではつい最近まで密貿易が行われていたようだ。北朝鮮は新型コロナ感染拡大で後手に回り、2月中旬から中国や海外の貿易会社に対して、コロナ診断ツールや防護服、マスクを急いで購入するよう指示した模様だ。中国での購入が難しくなると、国際機関やインド、ブラジルでも購入するように奔走したようだが、世界各国が自らの新型コロナ対策を急ぐ中、北朝鮮に協力しようという国はなく、実現しなかったようである。

 これまで北朝鮮が韓国に歩み寄ってきたのは、いずれも自国が困ったときである。新型コロナが蔓延すれば、北朝鮮の体制危機を招きかねない。金与正氏の強硬な非難は、弱みを見せないための隠れ蓑だろう。文政権はこれまでも各国との首脳会談で都合の悪いところは隠ぺいしてきた。青瓦台が、文大統領の親書の詳細を明らかにしないというのは「外交上の配慮」というよりも、新型コロナに対する協力について国民に知らせたくないとの意図が感じられる。文政権は、自国民の目を逃れ北朝鮮との協力に走っていくのではないか。

 文大統領は、北朝鮮に秋波を送り続けているが、北朝鮮は全く振り向いていない。片思いの状態は相変わらずである。そんな中、北朝鮮は9日、再び3発の飛翔体を発射した。南北融和どころか、地域の平和と安定がますます損なわれるばかりだ。文大統領はいつまで独り相撲を取るつもりなのだろうか。