悲惨な状況に陥り、自ら命を絶とうとした男に突然おこった不思議な啓示。スピリチュアルなことは一切信じなかったのだが……。どん底の苦しみが自分の宝物となり、立ち直るきっかけになるのだろうか。『答えはすでにあなたの心の中にある』から抜粋、要約。

 わたしは頭にふれている金属の冷たさを感じていた。どうしてこんなことになってしまったのだろう?じつは、みすぼらしいモーテルの一室に腰をおろし、こめかみに銃を押しあてて、引き金をひこうとしていたのだ。汗が額を流れ落ち、心臓はどきどき高鳴っていた。両手は手に負えないくらいふるえていた。だれもわたしの居場所を知らない。もうだれもわたしを気にかけていないようだった。わたしには命をかけるものがなかった。だから死のうとしていたのだ。

 いま、わたしの死亡記事の見出しが眼に浮かんだ。〈国際的なホテル起業家、ダール・サンダーセン、離婚歴があり三人の子どもがいる男性、四十四歳が、自殺しているのを発見された〉。

 でも、眼を閉じ、声にだして最後の祈りをとなえたとき、予期せぬこと――奇跡ではない――が起きた。急にめまいに襲われて床に倒れ、銃が手から落ちてしまったのだ。身じろぎもせずにその場に横たわっていると、わたしの体にまばゆいばかりの白い光があふれはじめた。

 そんな話は聞きたくないというまえに、わたしはきわめてまともで、道理をわきまえた人間であることを知っていただきたい。こんなことが起きたのははじめてだった。わたしは神秘がかった話を聞くといつも鼻で笑い、いい加減で信用に値しないと思っていた。いまだに天使と話をしたことはないし、星の位置にしたがって日々の生活をいとなんでいるわけでもない。