でも、わずか一年前、あのモーテルの部屋でわが身に起きたことを無視したり否定したりすることはできない。あれは神聖な体験だったのだろうか?スピリチュアルな覚醒だったのだろうか?極度のストレスに対して体が反応しただけだったのだろうか?正直いって、わたしにはわからない。わかっているのは、あのできごとによって続けざまにいろいろなことが起き、わたしが知っていた人生の要素が一変してしまったことだけである。

 その光はどんどん明るくなった。まもなく、わたしの全身は大きな発作を起こしているかのようにふるえはじめた。冷たくてきたない床のうえで、両腕、両脚、胴体がふるえ、滝のごとく汗がほとばしった。それは永遠と思えるくらいつづいた。やがて、どこからともなくことばが聞こえてきて、わたしの深奥を刺しつらぬいた。

「あなたの人生は貴重なものであり、あなたは自分で思っているよりずっとすばらしい人間なのです」

 それだけのことだった。いったんそのことばが心をよぎると、ふるえは停まった。わたしは汗だまりのなかに横たわり、天井を見あげていた。生まれてから、あれほどの内なるやすらぎを感じたことはなかった。「あなたの人生は貴重なものであり、あなたは自分で思っているよりずっとすばらしい人間なのです」

 しばらくしてから、わたしはゆっくりと立ちあがり、荷物をまとめた。わたしの奥深いところで、なにかが変わっていた。うまく説明できないが、とにかくそう感じたのだ。もはや自殺には興味がなくなっていた。あの声は正しかったのかもしれない――わたしのなかには、自覚していた以上のものがあったのかもしれない。