エプソンのプリンターが「インクで儲ける」仕組みを自ら覆した理由
大容量インクタンク搭載インクジェットプリンター(EW-M630TB) 写真:エプソン提供

一度確立したビジネスモデルを革新するようなアイデアを実現することは非常に難しい。しかしビジネスの環境が大きく変わる中、同じビジネスモデルが通用し続ける保証もない。どのようにビジネスモデルを進化させていくべきなのか。エプソンの事例から、そのヒントを学ぼう。(早稲田大学ビジネススクール教授 山田英夫)

 強固なビジネスモデルを持つ企業が、それを自ら崩すような事業に参入できるだろうか。これは、古くて新しい“永遠の課題”である。セイコーエプソン(以下エプソン)は、プリンター事業で強固な「ジレット・モデル」を構築してきた。本体のプリンターは廉価に販売し、消耗品であるインクカートリッジで儲けるモデルである。全色揃ったインクは5000円を超え、4回程買い替えれば、本体が買えてしまう。

 しかしエプソンは2016年、日本で2年分のインクが入った大容量インクタンクプリンターを発売した。同製品は、本体価格は高いがインクは2年に1度交換すればよいモデルであり、ジレット・モデルを真っ向から否定する商品であった。

 なぜエプソンは、長い時間をかけて確立してきたジレット・モデルを、自ら否定するような商品を出したのであろうか。

インドネシアで
ジレット・モデルが成立しなかったワケ

 エプソンは、海外でもプリンター事業を展開してきた。しかしなぜか、インドネシアでは、ずっと赤字が続いていた。インドネシアでは、日本の家庭用クラスのプリンターが、業務用として使われるケースが多かったが、エプソンが調査をすると、消耗品であるインクカートリッジが売れていないことが分かった。

 しかしどのプリンターも、しっかり稼働していた。なぜか。現地に、外付けタンクにインクを注入し、チューブを通してプリンター本体とつなぐ違法な改造業者がおり、消耗品が売れていなかったのである。