AbemaTVが営業赤字200億円でもインターネットテレビの雄を狙う理由インターネットテレビの世界で頭角を表わすAbemaTV。まだ赤字の段階だが、そのビジネスモデルには競合にはない強みも見える(写真はイメージです)

競争戦略が専門の山田英夫・早稲田大学教授が注目している企業の共通点は、見えないところにビジネスモデルの強みを持っていること。近著『成功企業に潜むビジネスモデルのルール』(ダイヤモンド社)で様々な業種を分析した氏によると、「見えない強み」を持つ企業は、規模の大小を問わず、他社が真似できないほどの競争優位を実現しているという。テレビというメディアの在り方を変えつつあるインターネットテレビの世界ではどうだろうか。元SMAP3人の出演が大きな話題を呼んだ「72時間ホンネテレビ」をはじめ、尖った番組づくりで注目度が急上昇しているAbemaTVの強みに迫る。

垂れ流しの「リニア型」にこだわる
インターネットテレビ局

 株式会社AbemaTV(アベマTV)は、サイバーエージェントとテレビ朝日の共同出資(それぞれ60%と40%)で2015年4月に設立され、2016年4月に「インターネット・テレビ局」として開局した。社長は、サイバーエージェントの藤田晋氏が務めている。

 もともとサイバーエージェントは、2015年からエイベックスと共同出資でAWAという音楽配信事業を行ってきた。これはiTunesのようにダウンロードして聴くのではなく、月額約1000円で聴き放題となる方式であった。選んで聴くのではないため、受け身で音楽を楽しめることから、未知なる音楽との出合いもあり、またレコメンド機能もあるため、自分の好みのテイストの音楽を聴き続けることも可能だった。

 当時の映画や画像のオンラインはオンデマンド型(利用者の要求に応じてコンテンツを配信)が多かったが、藤田社長はAWAの事業をやりながら、映像でもリニア型(コンテンツ垂れ流し型/同社では、受け身視聴と呼んでいる)の方がユーザーにとって 面倒が少ないと考えた。そこで始めたのが、AbemaTVであった。