黒人男性発砲事件に抗議
大坂なおみさんはなぜ叩かれるか

大坂なおみ「抗議」を行って、なぜバッシングされなくてはいけないのか。ウエスタン・アンド・サザン・オープンの表彰式に出席する大坂なおみ Photo:Matthew Stockman/gettyimages

 全米オープンに出場中のプロテニスプレイヤー・大坂なおみさんが、SNSで一部の人たちから叩かれている。

 大坂さんは、警官に銃撃された黒人女性の名がプリントされたマスクを着用して入場、同様のマスクを7つ用意しており、大会中に着け続けると表明した。また、全米オープンの前哨戦であるウエスタン・アンド・サザン・オープンの27日の準決勝を、黒人男性が警官から発砲された事件への抗議として、ボイコットした。

 それが気に食わない人たちが、「スポーツに政治を持ち込むな」などと叩いており、CMに起用している日清の商品に対して「不買」を呼びかける人まで現れる始末だ。

 ご存じのように、アメリカでは人種差別は非常に大きな問題で、NBAやメジャーリーグの選手たちも試合のボイコットや中止を表明しているが、このように個人攻撃をされたという話は聞かない。なぜ大坂さんだけが、バッシングされなくてはいけないのか。

 大坂さんを罵っている人たちのSNSを見ると目立つのが、そもそもの発端となった黒人男性への発砲は、警察の命令に従わなかった「自業自得」である、という意見だ。それを人種差別に結びつけて略奪や暴動をしている人たちは、トランプ大統領が言うように「テロリスト」であって、これを煽っている大坂さんも同罪だというのだ。

 このあたりは、「安倍首相憎し」でユーミンにまで「早く死んだ方がいい」と口走ってしまう人と「安倍信者」が、なかなかわかり合えないのと一緒で、まったく理解できないという人も少なくないだろう。だが、イデオロギーが違えば、「世界」は180度変わって見えてくる。「黒人による凶悪犯罪の多さを考えれば、警察だって正当防衛で8発くらい撃つだろう」と心の底から考えるような人たちも、世の中には存在しているのだ。