中国共産党指導部が
最も警戒する米国の動向とは
「日本軍国主義による侵略の歴史に正しく向き合い、真剣に反省することは、中日関係を構築し、発展させるための重要な政治的基礎になる」
9月3日、習近平共産党総書記(以下敬称略)は「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利75周年座談会」にて発表した談話の中でこう主張した。日本国民からすれば、日本が中国に対していかに悪いことをしたか、それに打ち勝った中国共産党がいかに偉大かを赤裸々に強調し、宣伝するこの手の式典を、第二次世界大戦が終了してから75年たった今になっても行うこと自体、中国共産党が歴史問題を政治化し、日本に対して圧力をかけるための道具にしていると映るだろう。
一方で、習近平は同談話で「中国と日本は近隣である。中日が長期的、平和的、友好的な関係を保持することは両国人民の根本的な利益、アジアと世界の平和と安定の需要に符合する。両国間における2000年以上の歴史においては、平和と友好こそが主流だったのだ」とも指摘した。筆者は、米国との関係が行き詰まり、11月に予定されている米大統領選の結果いかんにかかわらず関係改善の兆しは見えそうになく、香港や台湾問題でも解決の糸口がつかめないなか、アジアの大国であり、米国の同盟国である日本との関係を安定的に管理、発展させたいと中国共産党指導部が思索していると捉えている。
この政治的立場を裏付けるように、安倍晋三首相が辞任を発表した直後の定例記者会見にて、中国外交部の趙立堅報道官が、記者からの質問に答える形で、「近年、中日関係は正しい軌道に戻り、新たな発展を遂げている。両国の指導者は新時代が要求する中日関係を構築し、推し進め、擦り合わせていくという点で重要なコンセンサスを得ている。我々は安倍首相がこれらの面で果たした重要な努力を前向きに評価している。同首相の病気が一日も早く治ることを祈っている」とコメントしている。前回コラムでも検証したが、中国共産党は、ポスト安倍政権に対しても「取り込み策」を展開してくるに違いない。