「最近、なぜ日本の香港政策は強硬になったのですか?」
先週、香港に駐在する中国共産党の中堅幹部からこう聞かれた。この一言だけでは真意が理解できず、日本の香港政策の何がどう変わったと映っているのかを問いただしてみた。すると、以前は香港問題に関して沈黙を保ったり、自制的な言動をとったりしていたが、最近では、政府高官による香港問題に関する発言が増え、場合によっては欧米諸国よりも迅速にコメントをしたりしているのが気がかりだ、と説明してきた。
筆者は目の前にいる、中国共産党の権益や立場を代弁する立場のこの幹部の言っていることが全く腑に落ちず、「日本は民主国家であるから、民間にはさまざまな見解があるとして、政府の立場は終始一貫していると認識している。仮に変わった、あるいは変わったように見えるのだとすれば、それは香港情勢自体が変わっているからだろう」と返した。
香港に対する
日本政府の公式見解
日本政府の基本的見解は、中国の全国人民代表大会常務委員会が香港版国家安全法を正式に制定した日に、外務大臣談話として出した声明文である。そこには、同委員会が国際社会や香港市民が強い懸念を示す中、同法律が制定されたことに対して「遺憾の意」が示されている。日本国として最も切実な立場は次の一文だろう。
『香港は,我が国にとって緊密な経済関係及び人的交流を有する極めて重要なパートナーであり,「一国二制度」の下に,自由で開かれた体制が維持され,民主的,安定的に発展していくことが重要であるというのが我が国の一貫した立場です。』
また、8月10日、香港紙アップルデイリー創始者の黎智英(ジミー・ライ)氏や民主活動家で日本でも有名な周庭(アグネス・チョウ)氏らが同法違反として逮捕されたが、これを受けて、菅義偉官房長官が11日の記者会見で、記者からの質問に答える形で、「香港情勢に引き続き重大な懸念を有している。一国二制度の下に自由で開かれた体制が維持され、民主的・安定的な発展をしていくことが重要だ」と表明した。
上記2つの表明からも分かるように、日本政府の見解は明白である。