大国間の競争である国が取り得る一つの戦略は、競争相手の国から同盟諸国を引きはがし、自国の利益に沿う方向へと方針転換させることだ。1972年にリチャード・ニクソン米大統領は、米国の外交史の中で最も大胆かつ最も影響の大きい行動の一つに挙げられる北京訪問に踏み切った。当時の中国政府は、地域勢力であり核保有国でもあったが、米国やソ連にとっての同格の競争相手にはほど遠い存在だった。ニクソン氏は、中国を米国の影響力拡大の道具に変えた。われわれは今、中国政府が戦略ゲームをいかに巧妙に展開してみせるのかを目撃しようとしている。欧州連合(EU)と中国は14日、オンラインでの首脳会談を行う。もともとは独ライプチヒでの開催が予定されていた同会談は、EUと中国の投資に関する包括的合意達成を目指すものだ。この合意は、貿易の条件を定め、中国の補助金や欧州が保有する知的財産権の保護といった問題に対処するものともなる。そしてアンゲラ・メルケル独首相の想定通りに事が進めば、気候変動対策における中国の役割を規定することにもなる。
【寄稿】中国は対米戦略で欧州を味方にできるか
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