電動トラック新興企業の米ニコラは今夏、当時の会長が掲げた壮大な構想と個人投資家の熱狂が追い風となり、時価総額で一時フォード・モーターを抜いた。その会長は会社を去り、株価が直近のピークから約8割値下がりする中で、ニコラの先行きは事業モデルの強じんさが左右することになりそうだ。同社の事業モデルはこれまで、自動車業界の大物や大手メーカー、著名投資家を引きつけてきた。ただそれは、技術の著しい進展と劇的なコスト削減に依存するモデルだ。トレバー・ミルトン氏が2015年に創業したニコラは、自動車業界における「クリーンエネルギー革命」を掲げるスタートアップ勢の一角を占める。ニコラが注力するのが、バッテリー重量が開発の課題となっているトラックだ。ニコラは当初はバッテリーを使用する計画だが、ミルトン氏は非化石燃料エネの代替源として、水素の可能性に注目している。水素はコストの高さがネックとなり、これまで自動車業界で本格的に試されることはなかった。