ドナルド・トランプ米大統領は2018年、中国からの輸入品に高い関税を課した。中国政府はそれを受けて、貿易相手国から不当な扱いを受けた国々がよく頼る手段に訴えた。中国は世界貿易機関(WTO)に提訴したのだ。そして先月、WTOの紛争処理小委員会(パネル)は、中国に有利な裁定を下し、米国が中国に課した関税の大半はWTOのルールに違反しているとの判断を示した。
この中国の勝利は、中身のないものだ。今回の裁定はWTOの最終審に相当する上級委員会に持ち込まれることになるが、その上級委員会は現在機能していない。米国が上級委の新メンバーの指名を阻止しているからだ。このため今後当分の間、両国間の貿易関係を支配するのはWTOではなく、1月に達成された「第1段階」の米中貿易合意ということになる。