ドナルド・トランプ米大統領は、鉄鋼業界に対する選挙公約を守り、外国産の鉄鋼製品に対して25%の関税を課した。かつて偉大な米製造業の象徴だった鉄鋼業界の復興が狙いだった。関税は(一時的に)鉄鋼の輸入量を押し下げたほか、製品価格が上昇し、国内メーカーに恩恵をもたらした。また、鉄鋼メーカーに南部や南西部での事業拡張も促した。だが、トランプ氏が約束した鉄鋼業界の復興も、米産業の中心地における力強い雇用の伸びも実現していない。それどころか、自動車や家電などのメーカーは、関税により原料である鉄鋼・アルミニウム価格の上昇で打撃を受けている。「原料にいったん関税を課すと、企業は価格のゆがみに対処する必要が生じる」。カリフォルニア大学デービス校のキャサリン・ラス准教授(経済学)はこう指摘する。「関税は利益を圧迫するため、生産縮小や雇用減少を招くか、生産過程で効率の悪い代替品を使用しなければならなくなる」
トランプ鉄鋼関税の功罪、「復興」には程遠く
雇用の伸び消失、生産能力の増強が将来裏目にも
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